2017年4月24日月曜日

【駆け出しのころ】安藤ハザマ執行役員技術本部長兼技術研究所長・弘末文紀氏

 ◇最終イメージをきっちり描く◇

 もともと研究職を希望したわけではなかったのですが、入社して下水処理場の現場で3カ月間研修した後、技術研究所に配属されました。

 ここですぐに「読んでおくように」と渡されたのが地下水の流れに関する解析プログラムが記録されたテープのリールです。大学で海岸工学を専攻し、波の解析を行っていたので基本的な流れは理解できたのですが、1000行にも及ぶプログラムすべてを読むのに1カ月ほどかかり、夢の中にまでプログラム言語が出てきました。

 入社2年目、建設省土木研究所(当時)に出向し、ダムの基礎岩盤の地下水計測技術であるルジオン試験の精度向上に取り組みます。私はこの出向を終えたら会社に戻るものと思っていましたが、今度はそのまま日本原子力研究所(同)に出向することになり、低レベル放射性廃棄物の処理に関する研究に携わりました。

 これら二つの研究機関で勉強させていただいたことは大変ありがたく、貴重な経験になりました。土木研究所では、研究開発というのは目次を作り、あらかじめ結果がどうなるかを想定した上で実験計画を立てて仕上げていくのが、スケジュールに間に合わせる方法であると身をもって分かりました。

 一方の原子力研究所では、それまで誰もやったことのない初めてのものが研究対象であり、このため事前にどのような結果になるのか、シナリオを想定するのが難しい。そんな中でもどう計画を立て、また研究開発のストーリーに修正を掛けていくのか。こうしたテクニックを学べたと思っています。

 これまで会社の若手によく言ってきたことですが、研究開発した最終成果品の使われ方までをしっかりイメージすることが重要です。例えば最終イメージを持たず、「ここまで開発したので、最後の仕上げは現場でお願いします」と投げてしまっては、良い技術であっても使われていかないでしょう。使う側の立場で使われ方までイメージできたら、そこに至る開発の筋道もしっかり立てられるはずです。

 技術開発には「チャレンジ」「スピード」「アピール」の三つが求められます。少々難しいことから積極的に取り組まないと差別化にはつながりません。開発した技術を使ってもらうためには社内外へのアピールも必要です。

 最近はこれらに「タイミング」を加えて言うようにしています。タイミングを逸した技術開発には意味がありません。遅きに失しては駄目ですが、難しいのは、逆に早過ぎてもいけないことです。もっとも、早すぎたら棚上げしておけばよいのです。その棚卸しならいつでもできます。

 (ひろすえ・ふみのり)1985年京大大学院工学研究科土木工学専攻修了、間組(現安藤ハザマ)入社。技術・環境本部技術企画部長、同環境部長、安藤ハザマ技術本部環境開発部長、技術本部技術研究所副所長、同技術研究所長などを経て、16年4月から現職。大阪府出身、57歳。

入社2年目にダム現場でアスファルト
グラウチングの試験を行った時の一枚

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